「ねこひげハウス」の なりたちをたどる
石川さんがNPOを設立したきっかけは2011年、近所の動物病院で猫を5匹連れた男性に声をかけたことだったそうです。何匹飼っているんですか? と聞いたら「3ケタ」という驚きの回答で、今度、家を見に行かせてもらうことを約束。実際に、男性が自宅とは別に所有していたその一軒家へ行けば、荒廃した部屋にひしめき合う猫がいたといいます。
「いわゆるアニマルホーダー(劣悪多頭飼育者)で、外に猫がいれば片っ端から連れて帰ってしまうような人でした。家の中には200匹以上の猫がいて、ギリギリ命をつないでいる状態です。私は居ても立ってもいられなくなって、ボランティアで猫のお世話を買って出ました」
それから石川さんは数年かけて説得を続け、ようやく男性と一軒家の賃貸契約を交わし、そのまますべての猫を譲り受けることに成功したそうです。
かくして誕生した「ねこひげハウス」は、行き場のない猫の“最後の砦”として歩んできました。たとえば多頭飼育崩壊が起きたときには、譲渡が見込める猫はほかの保護団体が引き取り、残りの高齢猫やハンデのある猫は石川さんのもとで預かる場合が多いそう。
「私たちは、受け入れ先が見つかりにくい猫や緊急性の高い猫を中心に受け入れています。逆に、うちに子猫が来たら別の団体に引き取ってもらったり、近隣の保護団体とも連携しながら活動しています」
元気な子猫のお世話より、介護や看病のほうが自分の性分に合っているみたい、と話す石川さん。現在は、かつての一軒家シェルターより広さ1.5倍の平屋建てシェルターに引っ越し、医療ケアができる入院室も用意しました。


出典/「ねこのきもち」2025年2月号『猫のために何ができるのだろうか』
撮影/尾﨑たまき
取材/野中ゆみ
※この記事で使用している画像は2025年2月号『猫のために何ができるのだろうか』に掲載しているものです。